偏見・ステレオタイプ
我々は,他者がどのような集団に所属しているかに基づいて,評価を変えたり(偏見),見方を変えたり(ステレオタイプ化),ひいては行動を変えたり(差別)しがちです.こうした集団成員性に基づく評価・認知・行動の変容は,人の基本的なカテゴリ化のメカニズムから生じています.とくに,自己と関わる集団(内集団)には好意的に,自己と関わらない集団(外集団)には非好意的なバイアスがかかりやすいです(このことを”集団間バイアス”や”内集団ひいき”と呼びます).どのようなときにこうした集団間バイアスが生じやすいのか,どのように低減・変容は生じるのか,を検討課題としています.
ステレオタイプについては,「人に対する思い込み」もご覧ください.
動機づけられた偏見
さまざまな動機づけは偏見やステレオタイプの強力な増幅器とされています.とくに,内集団の価値を上げ,外集団の価値を下げる偏見は,内集団および自己の価値を高めるための心的メカニズムと強くかかわると指摘されています.この考えに基づき,これまで,自己価値への脅威下にさらされた男性における,女性に対する偏見が自動的に強まるという現象を示してきました.現在は,どのように動機づけられた偏見を低減できるかを検討しています.
集団カテゴリ認知と偏見・ステレオタイプ
われわれには,内集団を好意的に,外集団を非好意的に評価する傾向がありますが,その傾向は,カテゴリ分類が非常に微妙であったばあいですら生じ得ます.たとえば,クレーという画家の絵が好みな人,カンディンスキーという画家の絵が好みな人と分類されるだけで,同じ画家を好みとする人に好意を向けやすくなることが示されています(最小条件集団パラダイム).このように,どのような集団カテゴリ認知が,どのような偏見・ステレオタイプをもたらすのかを検討しています.
潜在的認知
われわれの評価・認知は,意識的に見えている部分だけで行われているわけではありません.われわれの頭の中では,意識的には物事を処理していないような場合でも,非意識的に評価や認知的処理が行われています.とくに集団に関連した非意識的な評価的・認知処理がどのようになされているのかを検討しています.
研究方法として,IATや連続プライミングなどの潜在測度(Implicit measure)を用い,非意識的に生じてしまう集団偏見・ステレオタイプを測定しています.
潜在測度についてご関心の方は,「IATホームページ」をご覧ください.